Eat the times

日本画収集家アメリカ人の話。彼が日本橋にある骨董品屋を訪れたとき、探していた掘出し物の絵画を見つけた。悩みに悩んだ末、購入を見送り。

半年後、忘れられずどうしても気になって欲しくなって骨董品屋に再び訪れて絵画を購入しようとしたら、、、倍の価格を提示されたそうです。あのとき買っておけばと思ったそうですが、それでも勉強代だと思って購入したという話。いくつかの学びを得ました。

この話から取り上げたい教訓は2つあります。1つは、、、

物との縁も自分のバロメーター

ということ。人とのご縁も大切ですが、同様に物との出会い・ご縁も大切です。何かしら意味があって交錯しているわけですが機会を逃すともう二度と交わらなくなるということが人生には何度かあります。ここぞという時の見極め、グリップ力の大切さです。出会い、ご縁を大切にしているというのは単に身を任せているわけでもなく、全てに意味性を見出しているわけでもなく、偶然性を愉しんでいるわけでもありません。

今、ここで掴まなくてはいけないものは何かを知っているということ

そしてそれを実行に移せることだと私は思っています。自分にとって必要な物だとするならば、それを瞬時に理解し、躊躇せず手に入れる。この判断と実行がセットになってご縁を紡いでいけます。悩むくらいなら買わない方がいいなんていう意見もありますが、悩んで見送ったあとに、やはり欲しくなって(必要になって)手に入れるというケースもよくありますよね。日本語コレクターのアメリカ人のように、倍の価格を提示されたけども買えたならまだいい方で、どんなにお金を出しても手に入らなくなっていることもよくあります。

グリップする力を持っているということが結果としてご縁を大切にした生き方に繋がるという学びを改めて感じました。

物とのご縁を通じて自分の調子を測るバロメーターにもなるのです。自分が濁っていたら比例してグリップ力も鈍りますから。

もうひとつの教訓は、、、

時代がつくことでしか得られない輝きがある

ということです。ノルウェーの古ノルド語の「brander」から派生した印は私たちの生活の中でたくさん目にすることがあります。大衆化、日常化しコモディティと化したものでさえ、ひとつの焼印として表明しているわけですが、ネーミングやロゴ、カラー、パッケージ、プロダクトとして実際に発しているメッセージと受け手の認知、価値に相違があることは例をあげるまでもありません。必要なものは満たされ、情報過多により処理が追いつかないという背景もあります。

バナーブラインドネスに代表されるように、どんなに声高らかにブランド宣言したところで半ば無視されてしまうのは自然なことなのです。換えの効くコモディティですから、情報の渦に飲み込まれて淘汰されていきます。一方で刻印されていなかったとしても、唯一無二のものであれば他と比べられることはありません。万人に価値を届けなくても、たったひとりにでも刺さればいい。

そう、彼が倍の価格を提示されても購入した絵画のように。骨董品やアンティークはお金を出しても手に入らなくなっているということもありますから、時代がつくことでしか得られない輝きこそが、ひとつのブランドの姿なのです。

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